ある殺人犯の異常な犯行はその街の人々を恐怖のどん底に陥れていた。
犯人は誘拐した被害者を気まぐれで殺すか否かを決定する。
殺される場合は惨殺、殺されなかった場合は無傷、
さらに被害者が発見される場所は様々で、
犯人の予測できない行動に人々は恐怖した。
そして殺す殺さないに関係なく、
被害者の肉親や友人にメッセージカードを送りつけるのだ。
そのカードには必ず被害者を殺したという旨が書かれ、
肉親や友人に絶望感を届けた。
ある時、とあるカップルが殺人犯のターゲットになり、彼女が誘拐された。
「お前の彼女はバラバラだ、もうこの世にいない」
そう書かれたカードが彼氏に送られてきた。
彼氏は怒りに震えるとともに彼女の無事を祈ることしかできなかった。
しかし、彼氏の願いもむなしく警察の捜査に進展はなかった。
カードが送られた日を境に、眠ろうとしても考えたくもない想像が次々に湧いてくる。
日が経つにつれて常に最悪の結果が浮かぶようになり、
まともに眠ることさえできなくなった。
彼は現実を受け入れることができずに、とうとう発狂してしまった。
数日経ったある日、警察が彼の家を訪ねると首を吊った彼氏が発見された。
そして、彼女は彼氏の家のウォーターベッドで眠っているのを発見された。
【解説】
『お前の彼女はバラバラだ、もうこの世にいない』
『彼女は彼氏の家のウォーターベッドで眠っているのを発見された』
つまり、彼女はウォーターベッドの中に
バラバラになって入れられていた。
『彼は現実を受け入れることができずに、とうとう発狂してしまった』
現実を受け入れることができずに、というところから、
ウォーターベッドの中に
バラバラになって入れられていたことに気づいたのだろう。
そのために、彼氏が自殺してしまった。
『殺す殺さないに関係なく、被害者の肉親や友人にメッセージカードを送りつける』
ということはまだ、生きているという希望が少し見えてしまう。
しかし、惨殺されていた時の絶望感は、
希望があった分計り知れないものがあるだろう。
その絶望感を考えただけでも恐ろしい。