姉ちゃんは大学受験に失敗してこれから浪人生活に入る矢先だった。
たぶん、全てが嫌になってしまったんだと思う。
二年後、俺は受験生となった、
ようやく姉ちゃんの死も受け入れることができるようになっていて、
姉ちゃんの分まで頑張ろうと思った。
両親からも大きな期待を寄せられた。
『日本男児たる者、己が恥は切腹する覚悟で生きよ。』
親父の口癖だった。
大学受験、勝負の夏、息抜きに家族でテレビを見てた。
季節らしくNHKで沖縄戦の記録を特集していた。
お袋は泣いてた。
親父と目が合った、親父は笑ってた。
【解説】
『日本男児たる者、己が恥は切腹する覚悟で生きよ』
というお父さんの口癖があるが、姉には
『日本女児たる者、己が恥は投身する覚悟で生きよ』
とでも言っていたのではないだろうか。
言葉は違うにせよ、
姉が自殺をしたのはお父さんの影響が大きいと思われる。
浪人を『恥』と感じたのだろう。
『沖縄戦の記録を特集』
とあるが、沖縄戦では集団自決が発生した。
お母さんには集団自決の話が
姉が自殺したのと重なって泣いてしまったのだろう。
お父さんとしては、
「それでこそ日本男児!」
と言わんばかりに笑っているが、
この笑みには
「受験に失敗したら姉みたいに自殺しろよ?」
という意味が込められているように思う。
なかなかこういう特集で笑みなんて出てこないのだから…。
それにしても、私自身浪人をしているが、
この家庭に生まれてたらと思うと…。
浪人で恥と感じ、自殺するくらいであれば、
お父さんはどんだけ修羅場をくぐりぬけてきたのだろうか…。
正直そこが気になってしまうところである。