面白い品を手に入れた。本物の藁人形だ。
用意する物は呪いたい相手の爪か髪の毛、それを藁人形に入れれば完成だ。
これで人形は相手と同調し、人形に与えた刺激は全て本人も感じる。
現に自分で試したところ、その効果は見事だった。
・・・さて、そんな面白い物を手に入れたはいいものの、
よく考えたら特に呪いたい相手がいないことに気が付いた。
しかしこんな面白い物を何もせずに取っておくのはもったいない。
どうしたものかと説明書を読むと、これはお守りとしても使えるらしい。
つまり人形が傷つかない限り自分も傷つかないということだ。
なるほど、これはつかえるかもしれない。
さっそく大きな金庫を買って、その中に自分の髪の毛を入れた人形を入れた。
しっかりと閉め、ダイヤルを回し、もう開けられないよう鍵も壊した。
こうしておけば何があっても俺は安全だ。
ためしに外に出て少し危ない事でもしてみようか・・・
男は出かけようとドアノブに手をかける。
しかし扉はびくともしなかった。
【解説】
『大きな金庫を買って、その中に自分の髪の毛を入れた人形を入れた。』
金庫の中に自分の髪の毛を入れた藁人形を入れたため、
語り手も家から出れなくなってしまった。
『しっかりと閉め、ダイヤルを回し、もう開けられないよう鍵も壊した。』
から、金庫を開けることは不可能である。
つまり、語り手は一生出ることのできない檻に
入れられてしまったも同然である。
ドアを開けることができない時点で、
きっと金庫の中と同じ状態。
窓も開かないだろうし、金庫のように壊すこともできないはず。
おそらくこのまま餓死してしまうだろう。
それにしても、試してみる前に鍵まで壊してしまうとは…
やはり世の中リスクはきちんと考えなければいけないと思う。