俺の家の隣には、父子だけの家族がいる。
団地だから、ベランダに出ればテレビの音とか会話が聞こえる。
隠れてタバコを吸ってたときに聞こえた会話。
子「ねえ、パパー」
父「ん?」
子「このテレビうそつきー」
父「なになに?なんだい?」
TV「(CMの音)ミルキーはママの味~♪」
パチンとテレビの電源が落ちる音がして、
子供が「パパ?パパ?」と言っていたが、次第に黙っていった。
身を乗り出せば隣の家は覗けたけど、しなかった。
それ以来、あの家族と顔を合わすことはもちろん噂を聞くのもはばかられた。
今ではどうなったのやら。
【解説】
『TV「(CMの音)ミルキーはママの味~♪」』
を嘘だと知っている娘。
つまり母親がいないのは母親のことを食べたから。
『それ以来、あの家族と顔を合わすことはもちろん噂を聞くのもはばかられた。』
噂を聞くのもはばかられた、ということは
何かしら非人道的なことをやらかしたことを指すだろう。
母親を食べたという事実が公になったから、ということかもしれないが、
今まで『父子だけの家族』だと思われていたのであれば、
「子供が発言しているだけ」と取られてもおかしくはない。
となると…もしかしたら母親の味を思い出し、
娘のことも食べてしまったのかもしれない。
その事実を知る者が噂もしたくない思いになったのだろう。
『今ではどうなったのやら。』
とあることから、語り手自身も
考えたくないもののもしかしたら母親を…
などという考えがあったのだろう。
特に気にしていなければこのような発言は出ないのだから。
…『それ以来』という言葉から、
もしかしたらこの語り手自身が噂として広め、
この家族を追いやったのかもしれない。
『あの家族と顔を合わすことは「もちろん」』
という『もちろん』という言葉も不自然ではないだろうか?
当然そうなるというニュアンスということは、
語り手自身が何かしら隣の家族に対して行ったのかもしれない。
隠れて煙草を吸っていた時の会話なため、
この会話を知っているのは語り手だけと考えるのが自然なのだから。
隣のお父さんは特に何もしていなく、
語り手の妄想だけで一家庭の居場所をなくした…
というのも一つの考え方であろう。
近所に住む人による誤解による破滅…
近所付き合いはきちんと行わないと
怖い目にあうかもしれませんね…。