ある宝物殿があった。
今日は年に一日だけ開放される日。
普段は近辺には人が常駐しておらず閉ざされた場所だ。
十時の開門を前に、案内係へ一本の電話がきた。
男「おい、門が開くのは何時だ?」
係「十時です。十時にならないと入れません。」
男「・・・俺はここから出たいんだ。」
【解説】
『今日は年に一日だけ開放される日。』
とあることから、前日に入ったお客さんが取り残されているわけではない。
『普段は近辺には人が常駐しておらず閉ざされた場所だ。』
近辺、という言葉からして中だけでなく警護している人もいないだろう。
となると、出たがっているのは泥棒の可能性が高い。
しかし、泥棒だったらわざわざ電話までして出れる時間を確認するだろうか?
入ったのであれば、捕まる覚悟でも出ようとすることはできるはずなのだから。
にもかかわらず、出ようとせずに電話をかけている。
と考えると、この宝物殿はもしかしたら、
「外からは入れるものの、自力で外には出れない構造」
になっているのではないだろうか?
だから、警備も必要なく、
入ってきた泥棒は憔悴しきって
助けを求めてくるため捕まえることもできる。
『宝物殿』というくらいなのだから、
泥棒にとっては魅力的な場所だろう。
だからこそこの『宝物殿』が
「泥棒ホイホイ」のように使われているのかもしれない…。