実家を離れ、一人暮らしをしているトム。
ある日弟から一通の手紙が届いた。
内容はトムが可愛がっていた猫が屋根から滑り落ちて転落死したというものだった。
トムはかなりショックを受けて、弟に手紙を返した。
「いきなりそんな事を言われたらかなりショックを受ける。
まず猫が屋根に登った事を書いて送り、
次の日に滑り落ちた事を、
その次の日に死んでしまったという内容を送る事にしてくれ」
しばらくたったある日、弟から手紙が届いた。
「母さんが屋根に登りました」
【解説】
トムに言われた通り、弟は
屋根に上った → 滑り降りた → 死んでしまった
と三日に分けて手紙を送るだろう。
つまり、母親はすでに死んでしまっている。
しかし、
『母さんが屋根に登りました』
だけで終わっているため、
兄に「もしかしたら母親は死んでいるかもしれない・・・」と思わせるための
ブラックジョークのようなものかもしれない。
屋根に上った → 屋根を修理した → 屋根から降りてきた
と続くのかもしれないのだから・・・。
それにしても、不審な点はいくつかある。
まずは、猫が屋根から滑り落ちて転落死したというものである。
猫は身軽で動転していても体勢を立て直すことができたりするはずだが・・・。
何階の家かわからず、2階の家を想像しているが、
猫が2階から落ちて死んでしまうのはあまり想像できない。
もっと階数のある家なのだろうか?
そして、母親が死んだと仮定するのであれば、
なぜ母親は「猫と同じように」屋根に上ったのだろうか?
もしかしたら、弟が殺したことを隠蔽するためのものが、
「屋根で殺したように見せること」だったのかもしれない。
・・・母親が死んでしまったのに3日に分けて手紙を送る。
これだと葬式にも間に合わないはずである。
弟は猫の死を早く伝えて「あげたかった」のに
3日で分けて送れ!!と言ってきたトムに
ある意味復讐の意味で送ったのだろうか?
3日で送る方が辛さが増す(続きが気になって夜も眠れないだろう)、
取り返しのつかないことになる(葬式に出れないなど)、
ということを身を持って体験してほしかったのかもしれない。
単純に「弟は素直」とも取れるのだが、
母親の死にトムの言いつけを守って3日間に分けて手紙を送るのも
また不気味な光景で怖いものである。