もうすぐ妻の三回忌だ。
夫婦仲は最悪だった。
勤めていた会社が倒産し、再就職したのは零細企業。
結婚するときの約束、マイホームは絶望的だった。
おまけに、まだ若いのにハゲ始め、腹の突き出たメタボ体型になってしまった。
妻は毎日のように俺を
「甲斐性なし!ハゲ!ピザ!」と責めた。
そんな妻があっけなく逝った。
あんなに喧嘩ばかりしていたのに、いざ居なくなってみると寂いものだ。
妻の夢だったマイホームを購入し、一周忌法要は新居に坊さんと親族を招いて行った。
新居の仏壇に飾られた遺影の妻もうれしそうに見えた。生きてる間に買ってやれなくてごめん。
もうすぐ三回忌。三回忌法要もマイホームで行うつもりだった。
しかし残念ながらやってあげられそうにない。
七回忌も十三回忌も難しいかも知れない。
もうすぐ夕食だ。
麦めしにおかずが1,2品だけの質素な食事だが、上げ膳据え膳だし、栄養バランスを考えた
食事だ。
こんな食事をかれこれ半年続けているのでメタボは解消されたよ
【解説】
『しかし残念ながらやってあげられそうにない。七回忌も十三回忌も難しいかも知れない。』
『もうすぐ夕食だ。麦めしにおかずが1,2品だけの質素な食事だが、』
刑務所にいる。
『もうすぐ三回忌』
『こんな食事をかれこれ半年続けている』
とあるため、二年が過ぎた当たりで捕まったのだろう。
殺人罪であれば刑期は10年未満。
妻を殺してしまったのであれば、
2年近くはばれないような工夫を取っているため、
刑期が更に長くなり『十三回忌』も難しくなっているのだろう。
いなくなってから、なくなってから「大切だった」と気付いてしまう。
嘆いてからでは遅いことが多いのに・・・人というのは不思議なものである。