「お待たせ。…あれ、どうしたの?」
「うん、ちょっと腱鞘炎ぎみなのよ、最近。」
「ふうん。仕事じゃ、しょうがないよね。
そうだ、さっき変な光景を見たよ。」
「どんな?」
「駅前に一人の男が立ってたんだけど、
しばらくして、もう一人男がやってきてさ、
いきなり派手に言い争いを始めたみたいなんだ。」
「『みたい』?」
「離れてたから良くわからなかったけど、二人とも、
腕を振り回しながら興奮してしゃべってたよ。」
「そう。それから?」
「後から来た方が、自分と相手を指差して、
いきなり右手の中指を上に突き上げたんだ。
これはてっきり殴り合いになるかと思ったね。」
「まぁ。それでどうなったの?」
「ところが、二人は笑って、抱き合ったんだ。
涙なんか流したりして。感動の再会って感じだったよ。…どう思う?」
「…なるほどね。私、わかったわ。」
「え、どの辺で?…あ、そうか、君の職業と関係あるんだね。」
【解説】
『いきなり右手の中指を上に突き上げたんだ。
これはてっきり殴り合いになるかと思ったね』
右手の中指を上に突き上げる行為は
外国だと相手を侮辱する強い意味を持つ。
しかし、今回は
『ちょっと腱鞘炎ぎみなのよ、最近』
『あ、そうか、君の職業と関係あるんだね』
という言葉から、
手話を行っている職業だと思われる。
右手の中指を突き出す動作は
「お兄さん」を意味するため、
感動の再開のようになっている。
この手話は「お兄さん」を意味するため、
知らない人にこの手話をすることはないが、
もし仮に外国の方がこの手話を見たら
どのような反応をするのだろう?
外国だと思っている以上に
危険な意味合いを持つらしいし…
気にしてはいけないところで、
少し気になってしまう・・・