この世に光よりも早いものは存在しないことはよく知られている。
ところが、ある世界的な超能力者が己の念力の伝達速度を知りたいと、
奇妙な実験を行ったことがあった。
地球からおよそ740光年離れた恒星に念力を飛ばし、
意図的に激しく明滅させるというのである。
結果は実験開始からわずか10秒後、恒星は見事に明滅した。
超能力者は
「光と等速でも740年かかる距離を10秒だ!
念力の真空伝達速度は光を遥かに超える!」
と興奮した。
彼は、この実験結果の真の不気味さに気がつくことはなかったという。
【解説】
仮に実際に740後年かかる距離を
10秒で到達し、恒星を明滅させたとしても、
その現象が地球に到達するには740年かかってしまう。
つまり、10秒後に恒星が明滅したのは
740年前の現象である。
なので、単なるトリック…と言いたいところだが、
この超能力者は気が付いていないようなので、
単なる偶然である。
この実験を一人で行ったのかはわからないが、
仮に一人ではなく複数人数で行ったのだとしたら、
超能力者以外の人たちはその興奮している姿を見て
事実を伝えることもなく、
あざ笑っていたのではないだろうか…
そう考えると人の怖さを感じてしまう。