数年前惨殺事件があったという家に
俺と友人A、Bの三人で、深夜に肝試しに入った。
「なぁ・・惨殺だったんだろ、恨みとか凄そうじゃん、怖ぇよ」
「あぁ、そりゃ悲惨だったらしいぞ。
抉られたり、くりぬかれたり、滅多刺しにされたり・・
しかも犯人はまだ捕まってないんだよな。」
「だけどA、おまえ普段幽霊なんて怖くない、なんて言ってなかった?」
・・なんて言いながら、家の中を懐中電灯の灯り一本で見てまわった。
割とキレイなままのキッチン、
座布団があちこちに散乱している居間と思われる部屋、
仏壇の扉が開いたままの仏間・・
気味は悪かったが、
これといった霊現象を体験することもなく、家を出た。
「なぁ、俺、霊みたいの何も見なかったけど、おまえ見た?」
「いや、俺もな~んにも。おまえは?」
「俺も全然見てないよ。」
「俺も、何も見て無いんだよ」
結局、何も無かったな。
少し拍子抜けしたが、安心した。
【解説】
肝試しに行ったのは、
『俺と友人A、Bの三人』
のはずである。
しかし、最後の会話を見てみると、
『なぁ、俺、霊みたいの何も見なかったけど、おまえ見た?』
『いや、俺もな~んにも。おまえは?』
『俺も全然見てないよ。』
『俺も、何も見て無いんだよ』
と、見ていないと言っているのが
4人と1人増えている。
連れて帰ってきてしまったようだが、
果たして誰に憑くのだろうか…?