俺は友人の運転で、事故にあった。
今は入院中だ。安静にしなければ成らないという理由で、
窓にはカーテンが閉められて外も見れないし、テレビすら置いてない。
友人は怪我すらないというのに、一度も面会にこない。腹立たしい。
一言謝れば、何も言わずに許してやるというのに。
学校帰りに見舞いに来た妹に、ノートとボールペンを貰った。
大手術後だという俺の姿に慣れなかった妹も、最近では大分打ち解けてくれるようだった。
ただの暇つぶしだが、昔流行した「デスノート」でも作ってやろうかと思ったのだ。
当然、始めに書く名前は、アイツだろう。これくらいはさせてもらわないと、割に合わない。
ノートに名前を書かれた者は死ぬ、という明快なアイテムだ。
俺は早速、躊躇しながらも、友人の名前を書き上げた。
本物のデスノートであれば、40秒後に友人は心臓麻痺になるはずであるが……
よく考えたら逃げ回っているというのに、どうやって確認すればいいのだろうか。
バカらしくなり、手術後しばらくぶりにはしゃいでいた俺は、
疲れきったように、ノートを床に落とした。
【解説】
『友人の名前を書き上げた』
『本物のデスノートであれば、40秒後に友人は心臓麻痺になるはず』
『疲れきったように、ノートを床に落とした。』
友人の名前を書いたのに、語り手が心臓麻痺で死んでしまった。
つまり…今の心臓は友人のもの。
『友人は怪我すらない』
ということから、
脳死か何かで死んでしまい、
友人の心臓で心臓移植を行って
語り手が助かったのだろう。
だから、語り手は『大手術』を行っている。
友人の運転で事故にあったが、
友人のおかげで助かったとも言える。
知らないことは罪、と言えるかもしれない。
それにしても、暇潰して『デスノート』を作れた
語り手は一体何者だろうか…。