部屋でベッドに寝転びくつろいでいたら、
いきなりドアが開いて見知らぬ女が入ってきた。
目が合った。
髪の長い、痩せた女だ。
顔は蒼白で、目をカッと見開き、体が小刻みに震えている。
思わず体を起こし身構えると、
女は「ぅ~」とか「ぁ~」とかかすれ声を出しながら、
ゆっくり後ずさり出ていった。
驚いた‥命拾いして良かったなぁ。
【解説】
『命拾いして良かったなぁ。』
果たして命拾いしたのは誰だろうか?
見知らぬ女性はいなくなったのに、
自分自身に向かって『命拾い』などとは言わないだろう。
つまり、語り手が見知らぬ女性を殺そうと思った。
きっとこの語り手は空き巣なのだろう。
そして、見知らぬ女性がこの部屋の住人。
顔面蒼白になり、体が震えたのも、
知らない人が家でくつろいでいたから。
後ずさりせずに大声を出したりしたら、
この女性は…。
状況がわからずパニック状態だったのだろうが、
女性一人で立ち向かわなくて正解だったように思う。