深夜、4世帯アパートが全焼した。
人が入居していたのは2部屋で、残り2部屋は空き室。
1階に住む老夫婦は旅行中の出来事で難を免れたが、2階で犠牲者が出た。
女子大生の部屋で3人の焼死体が見つかったのだ。
火事の原因は放火によるもの。
目撃情報から女子大生をストーカーしていた男が逮捕された。
一人暮らしをしていた女子大生は、生前周囲にストーカーに悩んでいることを打ち明けていた。
夜道をつけまわされたこと。
部屋のドアに精液がかけられていたこと。
家の中の物がいつの間にか移動していること。
自分を盗撮した写真が郵便受けに入っていたこと。
出したゴミが収集車が来る前になくなっていること。
執拗な無言電話、等々。
一人でいることに不安を感じた女子大生は弟に来てもらうことにした。
それがいけなかった・・・・・。
警察の取り調べに放火犯は涙ながらに動機を語ったという。
見張っていたら男が訪ねてきてそのまま部屋に入っていった。
俺ですら入ったことがない聖域に、見知らぬ男が入室を許されたことが我慢ならなかった、と。
【解説】
『女子大生の部屋で3人の焼死体が見つかったのだ』
ということは、女子大生と弟ともう一人いることが分かる。
動向を逐一見ているのであれば、
弟の存在を知っていてもおかしくはない。
しかし、
『見知らぬ男が入室を許された』
と、「見知らぬ男」という表現をしているということは、
ストーカーすらわからない相手。
つまりこの見知らぬ男というのは、
弟ではなく、別のストーカーが家の中にまで侵入していたのである。