兄が狂乱し、家族を皆殺しにした。
すぐに兄は逮捕され、死刑となった。
妹は幸運にも生き延びたが、事件のショックで記憶を失ってしまった。
父も母も失い、記憶もない。
空っぽな心で無気力なまま生きていた妹は、ある日占い師と出会い、自分の過去を占ってもらうことにした。
「何故兄は発狂したのでしょう」
「いいえ、アナタの兄は冷静でした」
「何故家族を殺したりしたのでしょう」
「いいえ、兄が殺したのはひとりだけです」
そして妹は全てを理解して、泣いた。
【解説】
占い師の発言がすべて事実であるとすると、意味がうまく通る。
兄が冷静で狂乱していないとすれば、妹が父や母を殺したことになる。
そして、兄が殺したのは一人で父と母以外に死んだ人間は兄だけである。
つまり、狂乱したのは妹で、兄はそれをかばって死刑になり自分自身を殺したのである。
最初は家族を皆殺しにしたと書いてあるにもかかわらず、なぜ妹が生きているのかと疑問に思ったが、この考え方では納得のいく答えは出なかった。
おそらく原文の言葉のあやであろう。